『真っ赤なりんご』第二話:風船とりんご

ある街のお話。
その街の真ん中には大きな丘がありました。
丘に登ると街が全部見えました。
学校も公園も百貨店も。
隣の街の観覧車だって見えました。
丘の上には小さなりんごの木がありました。
木の他には何もありません。
丘の上にはりんごの木がただポツンとあるのでした。
りんごの木は実を一つだけつけていました。
たった一つだけ。ポツンとあるのです。
そのりんごはもうそれはとてもとても真っ赤で町中のどのりんごにも負けません。
明るい時間には陽の光で輝き暗い時間には月の光で輝きます。
ある日風船が一つりんごの木にひっかかりました。
赤い風船でした。
りんごの木に真っ赤なりんごが一つと真っ赤な風船が一つ。
風船は揺れてほどけることはありませんでした。
最初は元気に揺れていた風船ですが時間が経つにつれ疲れてうなだれてしまいました。
りんごはそっと話しかけました。
「ごめんね、私の木がここにあったばかりに君は自由じゃなくなっちゃったね。」
風船は一目で分るほどとてもとても悩んでいました。疲れてもいるようでした。
風船は言いました。
「あなたはずっと同じ場所にいて退屈ではないの?
私は退屈で退屈でもう死にたいくらいなの。でも自分で死ぬことはできないの。
枝に体をぶつけて死のうとしてもなかなか難しいの。」
風船は風に運ばれてふわふわ飛んでいた時のことを思い出しました。
りんごは言いました。
「ずっと同じ場所にいるのも悪くないよ。
もうすぐ太陽が私を飛び越えて向こうに沈むんだ。
夜になるとね、隣の街の観覧車がピカピカ光るんだよ。
同じ場所にいるからこそわかる時間の変化や季節のうつりかわりがあるんだよ。
一緒に見ようよ。」
でもこの日は夕方から雨が一晩中降りました。
りんごも風船も一晩中黙っていました。
朝になって晴れて虹が出ました。
とても素晴らしい虹でした。
「虹が出たよ。」
りんごが話しかけると風船は雨に濡れてしぼんでしまっていました。

(つづく)
[物語] 川辺みほ(GiantGrammy)
GiantGrammyの女優であると同時に、GGプロデュースやインディペンデントシアタープロデュース「極-kiwami-」参加公演では、作家としても活躍。 GiantGrammyのサイトではipの連載第一弾だった「川辺的架空小話「Re:」をラジオドラマ用に書き直してオンエア中! 劇団サイト=http://giantgrammy.com/ 個人ブログ=http://ameblo.jp/mihogram/

[イラスト] 千歳晶子(隕石少年トースター)
ほっこりするコメディ「ピクニックコメディ」を信条とする劇団、隕石少年トースターの女優。小学生からやり手の突撃レポーターまで幅広く演じる。 ミュージカルと軽音部で鍛えた歌声や、イラストなど多彩な才能を発揮。今回で川辺みほとの初コラボが成立! 劇団サイト=http://www.inseki.jp/ 劇団ブログ=http://sky.ap.teacup.com/inseki/