『真っ赤なりんご』第三話:モグラとりんご

ある街のお話。
その街の真ん中には大きな丘がありました。
丘に登ると街が全部見えました。
学校も公園も百貨店も。
隣の街の観覧車だって見えました。
丘の上には小さなりんごの木がありました。
木の他には何もありません。
丘の上にはりんごの木がただポツンとあるのでした。
りんごの木は実を一つだけつけていました。
たった一つだけ。ポツンとあるのです。
そのりんごはもうそれはとてもとても真っ赤で町中のどのりんごにも負けません。
明るい時間には陽の光で輝き暗い時間には月の光で輝きます。
ある日もぐらが一匹顔を出しました。
茶色いもぐらです。
もぐらは地面とほとんど同じ色をしているのでりんごの位置から見つけるのには相当時間がかかりました。
よく見るともぐらは汗だくでとても疲れていました。
それでも顔を出してはもぐり顔を出してはもぐっていました。
りんごはそっと話しかけました。「大変そうですね。」
しかしもぐらには聞こえないようでした。今度はもう少し大きな声で言いました。
「もぐらさーん、穴掘り大変そうですねー。」
もぐらはその声に気付きキョロキョロしています。
「こっちですよー上です、上。りんごです。」
もぐらは言いました。
「あなたはりんごさんとおっしゃるのですね。私はあいにく目がほとんど見えませんのでりんごさんがどういうおかたなのか全く想像もつきませんがお声が遠いのでずいぶん上のほうにいらっしゃるのでしょうね。」そう言うとまたもぐってしまいました。
でもすぐに顔を出しました。
「りんごさん、あなたはずっとここにいらっしゃるのですか?」
りんごは答えました。「はい、ずっとここにいますよ。」
もぐらは少し喜びました。
「じゃあ私の悩みを聞いていただけますか?このあたりの土はとても栄養があるのかたくさんの食糧があります。 それで気に入って家族で最近ここに移って来たのですが、どうも地面の中に障害物が多くてしょうがないのです。 あいにく私は目が見えません。ですからよくそれに勢いよくぶつかってしまうのです。それで何度ももぐったり出てきたりしているのです。
土の中にあるあのグネグネしたあれがなんだかご存知ではないでしょうか?」
りんごは困りました。でも答えました。
「ごめんなさい、もぐらさん。私は地面の中をもぐったことが無いのでそのグネグネを見たことがないのですが、おそらくそれは私の根っこだと思います。」
もぐらは驚きました。「あなたはそんな高いところから地面のあんな深いところまでつながっているのですか?」
りんごは更に困りました。「そんなに深いのですか?本当にごめんなさい。」

その後何日間かもぐらは顔を出しましたがそれ以降現れることはありませんでした。
あきらめて他の所へいったのか、根っこの地図ができてもう頭をぶつけなくなったのか。
りんごにはわかりませんでした。

(つづく)
[物語] 川辺みほ(GiantGrammy)
GiantGrammyの女優であると同時に、GGプロデュースやインディペンデントシアタープロデュース「極-kiwami-」参加公演では、作家としても活躍。 GiantGrammyのサイトではipの連載第一弾だった「川辺的架空小話「Re:」をラジオドラマ用に書き直してオンエア中! 劇団サイト=http://giantgrammy.com/ 個人ブログ=http://ameblo.jp/mihogram/

[イラスト] 千歳晶子(隕石少年トースター)
ほっこりするコメディ「ピクニックコメディ」を信条とする劇団、隕石少年トースターの女優。小学生からやり手の突撃レポーターまで幅広く演じる。 ミュージカルと軽音部で鍛えた歌声や、イラストなど多彩な才能を発揮。今回で川辺みほとの初コラボが成立! 劇団サイト=http://www.inseki.jp/ 劇団ブログ=http://sky.ap.teacup.com/inseki/