「濁って見える。」

子供の頃、見てはいけない、見たくなかった光景は不思議と忘れるように努力していた僕です。
みんなそうなんじゃないの?
今回は自分では認めたくなかった記憶の箱を無理やりこじ開けてトラウマにチャレンジ!



あれは確か小学生高学年の夏。
家族でプールに行った時の事。
当時「波の来るプール」で世間を賑わせた某巨大プール場に我が家も一大エンターテイメントをこの身で体験しようとわざわざ繰り出したのだ。
よく覚えてないが特設ステージでは松本伊代が歌って踊るというイベントも開催されていた。
押し寄せる人口の波の向こうで16歳ではない松本伊代が歌っているせいで、
「波の来るプール」内の客の視線は全員特設ステージのほうに釘付けである。



ただ小学生高学年の頃の僕にとって、歌って踊る松本伊代よりも「潜る」という行為のほうが重要で、ある種の冒険心と未知との遭遇に期待を膨らませていた。
親に買ってもらったばかりのかっちょいい水中眼鏡を装着して、ひたすらに潜り続ける僕。
そうしているうちに、ほとんどの客の上半身は皆松本伊代のほうを向 いているのに対し、松本伊代のほうを向かずにお互い至近距離で向き合っている一組の若い男女を発見した。
これはどういうことなのかと、どうしてもその二人の下半身を確認したくて僕は息を吸い潜った。



そこから先はよく覚えていない。
思い出したくない。
ただそれ以降僕はプールの水がやけに濁ったように見える。
申し訳ない事に、無関係のはずの松本伊代まで濁って見えてしまう。

全国の若いカップルの皆さん、
これから夏が来ますが暑さのあまり子供に迷惑をかけない程度に盛り上がってください。どうかよろしく。

[コラム] 片岡百萬両 (ミジンコターボ)
ミジンコターボの主宰であり、演出であり、役者であり、宣伝美術であり、れっきとした器用貧乏。なんともポジティブに活動に取り組み、さまざまな劇団から客演の声がかかる忙しい男。
劇団サイト=http://www.mijinkoturbo.com/