「タイトルの付け方」

いつも「笑えない話」を読んでいただき、ありがとうございます。
さて、今月からしばらくは、過去の[ip](紙媒体時代)に掲載された全32回の中から厳選し、加筆修正してお送りします。
今月は「タイトルの付け方」です。

皆さんは作品のタイトルがどのような経緯で付けられたのか、意識したことはありますか?
制作側にいる方々はいつも苦労しているのではないでしょうか。
作品のタイトルを付けるのはとても難しいものです。いつも時間がかかります。
適当につけると、後々、後悔することになるからです。
今、タイトルを考えている方、次の3点には充分気を付けて下さい。

(1)「タイトルはいずれ、がっつり省略される」
一単語のタイトル以外は、後々に必ず略されます。
公演が終わり、後にその作品を語るとき、いちいちタイトル全部を繰り返すと、話のリズムが悪くなり、嫌われます。
そのため、大抵、一部分が使われます。
隕石少年トースターの公演で言うと、「王様の犬とその側近と宮廷人」は「王様」、「その日、男たちは地面から2cm浮いている」は「2cm」など。
大学時代の作品に「もはや食後ではない」というのがあったんですが、後々「もは食」と略され、響きの気持ち悪さに、後悔した覚えがあります。どうぞお気を付け下さい。

(2)「詳しいタイトルは後々、自分の首を絞める」
タイトルを決めるのは、公演準備期間のだいぶ早い段階です。
そのため、あまり具体的なタイトルを付けてしまうと、後々困ることになります。
稽古を進めて行く過程で、方向転換する必要が出て来ることは、よくあります。
その時、例えば「フランスから来た7人の料理人」なんてタイトルを付けてしまっていたら、きっと後悔します。
ドイツから来た3人の画伯たちの可能性を潰してしまうわけです。
ドイツの画伯たちは出来る人かも知れません。どうぞチャンスを残しておいてあげて下さい。

(3)「タイトルは、名刺のようなものである」
タイトルは、第一印象を決めます。
それで、相手の興味が湧かなければ、アピール失敗です。今後、相思相愛になれるチャンスを逃してしまいます。
特に雑誌などに情報が載る時は、タイトルだけしか表記されないこともあり、それが公演内容の唯一の手がかりになります。 そのため、自分にしか分からないようなタイトルは、勿体無いです。
例えば「セブン」とか。たとえ物語の最後に、お客さんが「うわあ…セブンや〜」ってなるとしてもです。

その3つに気を付ければ、あとはバランスです。
漢字・カタカナ・ひらがな・数字、文字には見た目の重さがあるので、実際に書いてみて判断します。
ちなみに、私のベストバランスタイトルは、昔、フジテレビで放送されたドラマ「今夜、宇宙の片隅で」。
読点(、)が漢字の重さを和らげ、ひらがなも絶妙な位置にあり、実に効果的です。

隕石少年トースターの過去のタイトルにも、かなり悩んだものがあります。
旗揚げ公演の「そうだ、廃墟へ行こう」がそうです。
廃墟という単語を入れつつ、ホラーではないですよという情報を伝えるために、3日かけて考えました。
知恵熱が出ました。ホント「笑えない話」です。

[コラム] 山内直哉 (隕石少年トースター)
「隕石少年トースター」の座付作家。東京のシナリオ学校でテレビドラマの脚本を学んでいたが、再び舞台に帰還して隕石少年トースターを旗揚げ。 ドキドキワクワクして最後にほっこりした気持ちになれる作品「ピクニックコメディ」を開拓!ほんわかした雰囲気だけど隠れた野心家。 07年には劇場プロデュース「#10」の作家に抜擢され注目を集めた。
劇団サイト=http://www.inseki.jp/