「くせ毛」

いつも「笑えない話」を読んでいただき、ありがとうございます。
さて、先月と今月は、過去の[ip](紙媒体時代)に掲載された全32回の中から厳選し、加筆修正してお送りします。
今月は「くせ毛」です。

私の髪は結構なくせ毛です。しかも堅い。
やわらかいくせ毛があるのかどうか知りませんが、堅いくせ毛は非常に厄介です。無理に髪の毛をとくと、くしが折れます。もちろん先端の一部です。柄が折れたことは今のところありません。
そして、くしを途中で止めると、その場で止まります。これはどういうことかと言うと、髪にくしが付いたままになります。イメージはレストランのショーウインドウに飾られた、ロウ細工のスパゲティーです。フォークが宙に浮いているアレです。もちろん宙に浮くほど堅くはないので、スパゲティーになる一歩手前で、くしは落ちます。

しかし、恐ろしいもので、一歩手前を経験すると、一層のことスパゲティーに挑戦したくなってきます。昔一度、ムースで試してみましたが、結構難しく、結局、重力には勝てませんでした。いつか月に行く機会があれば、再チャレンジしてみようと思っています。
しかし、実際月では、そんなことしている奴から死んで行くような気もするので、夢だけに留めておこうと思います。
そんな髪の毛なので、朝起きると、寝癖を直すのが大変です。
鉄腕アトムみたいな時もあります。鉄腕アトムの場合は、起きたらすぐに戦いに行かないとダメなので、くせ毛のままだと聞いたことがあります。手塚治虫に怒られるので早速嘘だと言っておきます。そもそも、あれはくせ毛ではないです。一方、お茶の水博士はくせ毛です。

そんな髪の毛なので、水に濡れると大変なことになります。
どんどん巻いて行くわけです。「おまえは何故そっちへ向かって行くんだ」と言いたくなるような奴がいっぱい出てきます。 これはもう髪の毛の反乱です。その反乱を治めるためには、さらに水をかけて押さえつけ、すぐに乾かします。
すぐに乾かさないと奴らの思うツボ。 さらに巻いて行くことに。そのため、お風呂上りも、自然乾燥なんて以ての外。ドライヤーですぐに乾かします。時間との勝負。くせ毛は生ものです。 こうして、ドライヤーで無事に乾かし、反乱が治まったところで、くしで整えるわけですが、なかなか整わない時があります。
その日の天気は雨です。長年の経験で分かってきました。今日は傘を持って出た方がいいかどうか、愛ちゃんに教えてもらわなくても、くせ毛の巻き具合を見て判断出来るというわけです。

そんな髪の毛なので、くせを直すのに非常に時間がかかります。サラサラじゃないので、乾きにくいし。そんなわけで、遅刻しそうになることがよくあります。 「くせ毛がなかなか乾かなくて遅れました」と言うわけにもいかないので困ったもんです。
くせ毛は何もいいことありません。
ただ一つだけ、いいことがあるとすれば、ストレートな髪の毛よりも笑えるということ。
悲劇と喜劇はカミ一重です。

[コラム] 山内直哉 (隕石少年トースター)
「隕石少年トースター」の座付作家。東京のシナリオ学校でテレビドラマの脚本を学んでいたが、再び舞台に帰還して隕石少年トースターを旗揚げ。 ドキドキワクワクして最後にほっこりした気持ちになれる作品「ピクニックコメディ」を開拓!ほんわかした雰囲気だけど隠れた野心家。 07年には劇場プロデュース「#10」の作家に抜擢され注目を集めた。
劇団サイト=http://www.inseki.jp/