演劇クリエイターたちが演劇以外で表現するマンスリーWEBマガジン = [ ip ]
WEB ip [ FEB.2010 ]

煩悩no.122「面白くなりたい!」

年明けに結婚した。
「いいお嫁さんになれるよ」「いつでも嫁に行けるね」と言われ続けて十数年。
かなりの熟成期間を経ての嫁入りである。
おつきあいスタート時から、半年にも満たないスピード婚。
周囲をえらく驚かせた。
本人ですら、大掛かりなドッキリではなかろうかと、いまだに疑うくらいである。

嫁いだ先は、夏暑く冬寒いで有名な京都。
住めば都とはよく言うが、今はまだ、大阪時代の快適生活を懐かしむ日々が続いている。
(住まんでも、すでに都ですやん京都、…的な突っ込みは、めんどくさいのでスルー)。

住む場所が変わっても、住居が仕事場でもある私の場合、パソコンと電話とファックスさえあれば、
仕事環境はこと足りる状況。
家事も一人分が二人分になっただけで、労働時間がさほど増えたわけではない。
夜を徹して飲み歩くことはさすがになくなったものの、
生活自体は独身時代とさして変わらないわけで。

しかしながら、
ひとつだけ────、大きく変わったことがある。

確実に
「面白くなくなった」
のだ。

始めは全く気づかなかった、この現象。
他人に指摘され、エモイワレヌ絶望感が私を襲った。
これはあれだ。
女芸人が恋愛した途端に、面白くなくなるというあれだ…。
人生において『笑い』に重きを置く私にとっては、かなりのダメージ…。

とはいえ、今までそんなに面白かったのかと自問自答してみると、そうでもなく。
じゃあ何が変わったのか、私が面白い人だと周囲を錯覚させていたのは何だったのか。
はっ!もしかして、自虐ネタ…。
ここ数年、口を開く度に、「三十路・独身・彼氏なし」ネタを繰り広げては、
笑い(もしくは失笑)を誘っていた私。
自身につけたキャッチコピーもズバリ、「勝ち犬気取りの負け犬女」だったりする。

人の不幸は蜜の味。
のろけ話よりも、ダメンズに振り回された談義。
仕事のサクセスストーリーよりも、上司とのセクハラ事件。
他人の幸せ話より、不幸話が好物の人は多い。
一見、悪趣味なようにも感じられるが、さほど悪いことではなく、むしろ自然なことであると私は思う。
もっとも、笑い話に変換できる内容であることが、条件ではあるが…。

自分の身に降り掛かった悲しいことや辛いことを話のネタにして、
誰かに明るく笑い飛ばしてもらえれば、話す側の心も楽になるから一石二鳥!
「ユーモアの根源には悲しみがある」とは誰の言葉だったか。
人は悲しみを、笑いに変換しながら生きているのだ。

どうやら以前の私には、過剰なほどそのケがあったらしい。
情けない出来事や悲しい出来事が起こるたびに、それをすぐさま笑いに変換していたように思う。
もちろん、それを痛々しいという人も沢山いたけれど。
言ってる本人は、ネタにでもしなきゃ、やってられなかったのだ。きっと。

面白くなくなった=自虐ネタがなくなった。
この方程式が成立するならば、
自虐ネタがなくなった=今とっても幸せ☆
という方程式も成立するのかもしれない。

「やったらもう、別に面白くなくてもいい!」

と、ここでキレイに締めたいところだが、そうは思えない自分がいたりして。

これからは、自虐ネタ以外の面白いネタを生み出すべく、精進の日々。
目ん玉ひんむいて、耳の穴かっぽじって、感受性を磨きつつ、面白センサーフル稼働で、
毎日を生きる。
最低最悪、他人に面白いと言われなくとも、せめて自分が自分自身を面白いと思えるように…。

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この122個目の煩悩を最後に、私、長滝安希、ipコラムを卒業します。
愛すべき劇団・ババロワーズを退団するに伴い、演劇人でなくなるからです。
演劇人の次は何人(ナニジン)になろう?
映像人?演芸人?音楽人?それとも出戻りでまた演劇人?
とにかく次のステージでも、なにかしらの表現人で、い続けられることを願いつつ…。

これまでご愛読いただいた皆様、ありがとうございました!
またどこかでお会いしましょう。
バイチャ☆

長滝安希 改め 長滝亜希子 改め 涌井亜希子


煩悩は無限大に続く…

長滝安希 (ババロワーズ)

ええ大人がバカバカしいことをとことん本気で表現していく、関西小劇場界の自称・秘密兵器「ババロワーズ」在籍。 クロムモリブデン、208+での映像制作活動を経て、裏方からいつのまにやらコメディエンヌに。また、大阪芸術大学在学中から、アホアホ映像作品を多数制作&発表。密かにドイツやフランスで上映された輝かしい過去も…。が、メカに弱いため、時代の流れについていけず、最近はウン十万もするカメラが押し入れの肥やしになっている。 大学卒業後は表現活動と並行しながら、TV業界→大学→広告業界で働いた後、2008年よりフリーライターに。昭和の時代を愛するアラサー独身女子として、勝ち犬気取りの負け犬人生を面白おかしく満喫中。 座右の銘は「人生、運と縁と勘」。

劇団サイト=
http://babarowa.sakura.ne.jp/
個人ブログ=
http://atamatokokoro.jugem.cc/